2012年1月27日金曜日

エベレスト

世界一の高さを誇る名峰の話ではない。ロードレーサーの話だ。今から20年前エベレストはエヴァと呼ばれていた。

”EVEREST ESPRIT SC” 

クロモリフレームの美しさをこの上なく発揮した機能美と気品。今は無き土屋製作所のフレームだ。

当時私は、毎日の通学に使っていたケルビムのロードレーサーを盗まれてしまい、何もやる気が起きないほど落ち込んでいた。エベレストのことは雑誌でしか見たことがなく、憧れてはいたものの雲の上の存在のように思っていたのだが、ある日行きつけの自転車屋「輪童子」の店頭に、そのフレームが吊るしてあるのを目にしたのだった。サイズはピッタリ。店主が自分のためにこっそり用意しておいてくれたのかもしれないなどとは思いもせず、ただただ運命的な出会いに夢中になった。もちろん、即購入を決断。昼飯をケチりながら小銭を貯め、ちょっとずつ支払いを続けた。2ヶ月かけて部品が揃うと同時にようやく自分のものにすることができた時は天にも昇る気持ちだった。ホイールの手組みにも挑戦し、店主に工具を借り、手順を教わりながら組み立てたのもこの時が最初だった

これぞロードレーサー。当然走りにも気合いが入った。競輪選手御用達のフレームでダラダラと走る訳にはいかなかった。

そんな思い入れ深い自転車も、大学に入り車の免許を取得すると「床の間自転車」として部屋の飾りになってしまった。そのうち手狭になってベランダに出されるようになり、いつしか雨にさらされるようになってしまった。

それから何年も経ったある日、仕事の関係で金属加工屋さんへ赴くと、そこにエベレストのフレームが吊るしてあるのが目に入った。聞くと、このフレームからロードレーサーを組むと言うではないか。そこからは、仕事の話はそっちのけ。忘れかけていた感動がよみがえり、雨ざらしにしていた自分のエベレストも早速レストアしたくなった。だが、20年近いブランクのため自転車情報のギャップにはだいぶ戸惑った。今も変わらず乗り続けているかつての自転車仲間を頼り、パーツの情報を教わりながら何とか復活させることができた。

長いブランクの間に世の中はカーボン製の軽量バイクが全盛となり、「ロードレーサー」も「ロードバイク」という呼び名で呼ばれるようになった。今改めてクロモリのエベレストに乗って感じるのは、ハンドメイドの素晴らしさ。美しさと頑丈さ、競輪選手がこぞって乗っていただけの高い精度。カーボンバイクと並べても今なお輝きを失っていない。

レーム EVEREST ESPRIT SC、チューブ コロンバスSL
ヘッド金物 Campagnolo (カンパニョーロ)スーパーレコード
ハンドル Cinelli(チネリ) チャンピオン デル モンド
ステム  Cinelli(チネリ) 1A
FD Campagnolo(カンパニョーロ) ヌーボレコード
RD Campagnolo(カンパニョーロ) ヌーボレコード
クランク Shimano NEW DURA-ACE 7400 歯51×41  170mm
BB Shimano NEW DURA-ACE 7400
シートポスト Simano NEW DURA-ACE 7400
サドル Sanmarco (サンマルコ) リーガル
ペダル Shimano NEW DURA-ACE 7400
ブレーキ本体 Shimano NEW DURA-ACE 7400
ブレーキレバー Shimano NEW DURA-ACE 7400 エアロ
ハブ Shimano NEW DURA-ACE 7400 13-14-15-17-19--22
リム Campagnolo (カンパニョーロ)Victory strada
チェーン Suntour (サンツアー)Superbe pro